Training in Commercial Pilotage with FTD - Lead Design for Take Off Climb

都内某所で Flight Simulator による F/O 訓練。B737-800 で 2.0H。

Straight & Level Flight

いつものとおり Take Off from RJTT RWY 34R から 6,000 ft, 240 kts での Straight & Level Flight。

前回の反省から、5,000 ft → 6,000 ft への上昇を 2 分以内に収めるべく、4,000 ft - 5,500 ft は 2,000 ft/min を維持、その後は 100 ft ごとに - 400ft/min ずつ緩やかにすればよいと予め VSI の諸元を設計してきたものの、VSI が感度が高すぎて想定通りにいかず。諸元設計が大事、だから事前に設計してきた、しかし、うまくいかない、と正直に N 教官に告白すると、Take Off 再チャレンジすることになり、ポイントポイントで "Pitch" を中心に指示される。これで開眼、驚くほどスムーズかつ正確に上昇できるようになる。

操作の対象とすべき目標は A/S や Alt の水準ではなく、ましてやそれよりも感度が高い VSI などではなく、Pitch だ。所望する諸元や姿勢には、まず Pitch の所要水準がある。それを維持できていれば A/S と Alt がほぼ所望する水準に位置する。その上で A/S と Alt のトレンドを読み Pitch を微調整する。もし、Pitch 操作で A/S と Alt が所望水準方向へ相殺する動きにならなければ Throttle 設定がズレている。

Straight & Level では Pitch = 2.5°+. Throttle = 63% で安定する。Climb (Altitude Change) では Pitch = 5°+, Throttle = 73% とすると VSI は + 1,000 ft/min で安定する。同様に Pitch を主目標、Throttle を副目標として下表の諸元を維持するとスムーズに Take Off Climb ができる。

B737-800 A/S Pitch Alt VSI Throttle
Rotate VR 0 0 TO/GA
Rotate + 5 sec 12.5
400 ft 159 17.5 400 4,000-
3,000 ft 240 10.0 3,000 3,000-
1,000 to Level Off 7.5 5,000 2,000- 80%
500 to Level Off 5.0 5,500 1,000- 70%
Level Off 2.5+ 5,950 500- 63%


小型機ではあまり Pitch を意識しない。Throttle で諸元 (特に Alt) の絶対水準がほぼ決まることに加え、Gust で失速になりうるほど低速であることから、Scan の中心が A/S になるためだ。

一方、ジェット機は高速であり、Pitch 髪の毛1本分で A/S も Alt も VSI も大きく狂う。したがって 、感度の高い A/S, Alt, VSI の水準を追いかけてはいけない。それらの "トレンド" を先読みし、Pitch を整える。水準を追いかけるべきは Pitch (と Throttle)、A/S, Alt, VSI はトレンドを追いかける、が Scanning の本質である*1

本日の重要ポイント

  • ジェット機の諸元や姿勢は Pitch で作る
  • Pitch (と Throttle) の水準を追い、A/S, Alt, VSI はトレンドを先読みするのが Scanning の本質

*1:Pitch を追いかけるというのがジェット機における Scanning だが、それに特化した MPL 訓練で育ったパイロットが飛行の根本原理を忘れたのが AF447 事故だと考えられる。

Training in Commercial Pilotage with FTD

都内某所で Flight Simulator による F/O 訓練。B737-800 で 2.0H。

Straight & Level Flight Step Check

本日は元 ANA Wings Pilot (その前は空自 F-4 Phantom II Pilot) の K 教官に 1 時間のトレーニングを受けた後、いつもの N 教官による Straight & Level Flight の Step Check。

K 教官と Take Off from RJTT RWY 34R から 6,000 ft, 240 kts での Straight & Level Flight。Straight & Level Flight は Pitch も Heading も ±0.5 °、±10 ft に収め、それを 10 分、15 分と維持する。下記の特徴があるために「実機より操縦が難しい Simulator でここまで集中力を持続し、精度を維持できるのはプロパイロットでもなかなかいない」とK 教官からお墨付きをいただく。

  • 実機にはある Yoke に対するフィードバックがない。
  • 実機よりも Yoke の遊びが大きく、繊細なコントロールが難しい。
  • 訓練のために敢えて発生させているのか、安定飛行をしていても、それを崩す Random Noise (突然の諸元の揺らぎ) がときおり入る*1。Gust があったとしても実機ではここまで揺らがない。

それでは、と小休止を挟んだ後、N 教官による Step Check。また Take Off from RJTT RWY 34R から 6,000 ft, 240 kts を目指す。 5,000 ft から Time Check で 2 分以内の Stabilize で合格。いつもより安定した Take Off & Climb で 1 分 40 秒くらいで 6,000 ft, 240 kts 近辺へ寄せるが ... Over Control で 4 分たっても安定しない ... そして Fail。

敗因は、目標へ寄せることに夢中になり、集中しすぎで Scanning 頻度が落ちている、とのこと。2 分の Time Trial で平常心を失ったでしょう。Examiner はそこを見てるのですよと。

... それは否定しない。Scanning 頻度が落ちているのは自覚があった。事前に平常心を保つと内心言い聞かせたにも関わらずこの結果となったのはメンタルの弱さだろう。だが一方、いい集中力を発揮した、だからこそいままでにない Smooth Climb ができたとも思っていた。前半のトレーニングにおいては、繊細な Straight & Level Flight でお墨付きをいただいたにも関わらず、Stabilize できずに Fail した真の敗因、自己の弱点は別にある。

1,000 ft 以上など目標諸元を大きく動かすときに必要となる操作量・操作タイミングがわかっていないのだ。Unual Attitude から体勢を立て直すときの初動、そして、Straight & Level Flight において 10 ft, 0.5 kts を髪の毛1本の精度で行う繊細なコントロール、はもう既に体得している、が、その中間、少し離れた目標水準へ合わせるときの操作をうまく設計できていない。Pitch を上げるべきか下げるべきか、Throttle を上げるべきか下げるべきか、操作の方向性は瞬時に判断できるようになった、が、操作量と操作タイミングがわからない。そしてこれまでジェット機のそれをきちん教わったことがない。小型機の操作手順でそこを埋めようとしていることが失敗の原因なのだ。うまくいくはずがないのに、ときにまぐれ当たりでうまくいってしまうことがあることが事態をよりわかりにくくしていたと思う。

小型機 (Cessna 172) では、目標高度の - 50 ft 手前 (Climb), + 100 ft 手前 (Descend) で Level Off のための Throttle 操作をする。ジェット機は速度が速く、また、慣性があるからもう少し手前で Level Off 操作だろうと適当に 200 - 300 ft 手前で Throttle 操作をしてきた。だが、それが間違いだと今日 Step Check の後に気づいた。正確に教わったわけではないが、教官の言葉の端々から、ジェット機の正しい操作は以下のようなものではないかと推測する。

  • ジェット機においては Level Off のための初動は Throttle ではなく Pitch。Throttle は AirSpeed 調整目的で使う。
  • VSI を意識する。Altitude Transition は 500 - 1000 ft/min くらいで緩やかに行うのがよい。
  • 大きな転針は 15°Bank で、小さな転針はその角度の Bank で行う。
  • 操作量は根拠に基づき決定する。小型機の経験に基づき適当に決めてはならない。

必要なのは、平常心と根拠に基づく Transition 設計だ。

K 教官は優しい。操縦は弱い己の心と闘い続ける武道だと教えてくれた。

本日の重要ポイント

  • Simulator 特有の Random Noise があろうが、それを含めて修正する
  • 平常心を保つ (過度な集中は Scanning の敵)
  • 根拠に基づき Transition を設計する
  • 適正な操作量・操作タイミングを身に着けておく (Pitch, Speed, Bank, VSI 等の設定枠を予め設けておき、それを超えない)
  • 修正操作を入れたら、必ず戻す (Flight Simulator はちょうどよいポジションを探るゲーム)
  • コンタクトレンズではなくメガネをかける*2

*1:Simulator の Random Noise は、安定飛行していれば Noise だねと教官にもわかるが、操作中に発生すると、教官にはそれがわからず、Over Control や不要操作だと判断されてしまう。Gust に対してカウンターを切るように Noise があろうがそれを含めて修正できなければ、できない奴の言い訳となってしまう。

*2:集中するとドライアイになって画面が見えない。

Training in Commercial Pilotage with FTD

都内某所で Flight Simulator による F/O 訓練。B737-800 で 2.0H。本日は様々な指定諸元への Smooth Transition および Recovery from Unusual Attitude。

Straight & Level Flight

まずは、いつものとおり Take Off from RJTT RWY 34R から 6,000 ft, 240 kts での Straight & Level Flight。

Take Off は不格好ながら、Straight & Level Flight は ± 5 ft, ± 0.2 kts 以内に収めるなど Pitch も Power 設定もかなり繊細にできるようになってきた。諸元が全体的に整っており、大きく狂うものがない、すなわち Scanning が上達しているとのこと。

ところが、教官からは「Heading だけは必ず数度ズレていますね ... Heading と Track の違いはわかりますか?」と言われ ... 「ん? Alt, A/S の調整より簡単な Heading の操作をできないはずはない (し、Heading と Track の違いがわからなければ実機で Cross Country に出られるはずがない)」といったん止めてもらって相互確認する。その結果、B737 の Navigation Display の読み方を誤っていたことが判明。自機の先に延びる白線を Heading だと思い込み、それを桃色の Bug に合わせるものだと考えていたら、白線|は Track、白三角▽が Heading、白ボックス□内の数値は Heading / Track 表示モードの場合にそれぞれ Heading / Track になるらしい *1。したがって、Bug を Target Heading に合わせたら、表示モードが Heading / Track いずれにせよ、白三角▽を Bug に合わせるように飛べばよいということになる。ADI の Bank 表示といい、無知からくるこの類の誤りが多い ... (特に、小型機から大型機や別メーカーへの) 機種移行訓練は充分に積まないと危ないということだ。

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Heading 表示モードの Navigation Display
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Track 表示モードの Navigation Display
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CTR セレクター (VOR = Heading 表示モード、MAP = Track 表示モード)

Recovery from Unusual Attitude & Smooth Transition

その後、Straight & Level Flight や Unusual Attitude から指定諸元への Smooth Transition を実施する。おおむねうまくできるのだが、5 分間継続と時間指定されたり、2 分以内に指定諸元に収めると制限されると指定時間の 2/3 ほど過ぎたころに、集中力が切れ、Scanning が荒くなって崩れる諸元があり、それを戻そうと小型機のように荒く操作するクセが出てしまい Over Control となることが多い。残り時間が少なくなってから大きく狂うため Stabilized Transition は難しくなってしまうのだが、過去の大失敗の教訓 *2 を活かし、それでも Stabilize させることを最後まで諦めない。その結果、Time Up の時点では、Stabilize とは言えず、多少の揺らぎがあるものの、おおよそ指定諸元にいる。その諦めない姿勢が教官から大いに褒められる。

最後に 10,400 ft から 2,000 ft までの降下を指示され、Power Idle にしても Descending Rate が低く時間がかかるため、Spoiler を使うことを提案し、操作させてもらう。

著しい上達があったものの、Step Check を兼ねていたであろう今回の指定諸元への Smooth Transition 訓練で常に安定的に Stabilize させることができなかったためか、明確に合格とは言われなかった。Step Check Clear に向けて Smooth Transition に必要な要素を本日の重要ポイントに記す。

本日の重要ポイント

Smooth Transition に必要な要素は下記のとおり。(前回の拡張版)

  1. 初動 (Recovery from Unusual Attitude の場合)
    1. Bank と Pitch をクイックに修正 (特に Pitch を一定幅に抑える)
    2. 目標諸元を PFD の桃色表示で確認
    3. Power を荒く調整 (Power Idle でも高度は緩やかにしか下がらない *3 )
    4. 初動対応後に気を緩めない (ここで考えてしまい Scanning が遅くなる傾向あり)

  2. 諸元水準の移行
    1. いかなる諸元要素も現状より悪化させない
    2. 全体をおおまかに適正水準へ持っていく (複数の諸元要素を同時に補正しようとしない)
    3. 待って安定させる (持っていこうとするのではなく、待つ)
    4. 至らない諸元要素を把握し、調整する
    5. Level Off への移行ポイント・操作を事前に設計する

  3. 諸元の微調整
    1. 細かく補正する
    2. 集中力を持続する

*1:表示モードの切り替えは Mode Control Panel 上の左席 Navigation Display の上部あたりに位置する CTR セレクターで行う。

*2:Private Pilot License の筆記・対面試験のときに 70 点取れば合格なのだからと、苦手分野は早々に捨て、得意分野で稼ぐ戦法を取っていたら、何かをすぐに諦める姿勢は Pilot として必要な資質と真逆のものだと試験官から指摘され、その場で Fail となってしまった。Business Person と Pilot は求められる資質が大きく違うということを身をもって知った。

*3:ジェット機の場合、アイドルにしても N1 = 33% くらいにしかならず、また、速度が速く流線形であることからプロペラ機に比して空気抵抗が小さいため。

Training in Commercial Pilotage with FTD

都内某所で Flight Simulator による F/O 訓練。B737-800 で 2.0H。本日も 6,000 ft, 240 kts で Straight & Level Flight および Recovery from Unusual Attitude。

Straight & Level Flight

Straight & Level Flight は安定してできるようになってきた。難しいと思っていたジェット機も、Throttle をおおよそ適正に設定し Pitch を ±2 °以内に収めさえすれば、じっと待つことでほぼほぼ所望諸元になることを体得し、安心感を得る。EICAS へ視線を向けても Pitch を ± 2° から外さず、VSI の微妙な動きや York の圧を感じてその揺らぎを相殺するように髪一本の精度で York を動かすことで Pitch のブレを減衰させられるようになる。Pitch Trim を使う余裕も出てきた。

一方で、Bank 操作は以前よりも荒くなった。あるいは、操作は変わらないものの荒さに気づくようになったのか。Pitch & Throttle より劣後してよいと前回学んだものの、Bank 調整は実際のところおそらく想定していたよりも繊細であるのであろう。1° 程度の Bank であっても思うより早く大きく Heading が歪んでくることを感じる。

自身の感度が高まったことに自信を持ったのだが、Recovery from Unual Attitude になるとすぐに混乱する。初動は悪くなく、また、前回の反省を活かし、すべてを同時に調整する必要はないとの心構えで臨むのだが、何を修正すべきか、何を優先すべきか、時々わからなくなり、考えてしまって反応が遅い自分がいる。

今回の気づきは、相反する次の2点。

  1. 諸元の絶対水準を目標に操作するわけではないジェット機といえども Throttle と Pitch の設定が適正枠内であれば、おおむね所望諸元へ向かう
  2. だが Unual Attitude では (Throttle はともかく) Pitch を一定枠に収めるのがきわめて難しい

Unual Attitude で Pitch 制御が難しいのは A/S や Trim が大きく狂っているためだ。

この気づきを得てもまだなお解決されない課題がある。それが回復操作途中で混乱し、考え込んで反応が遅くなる理由。それは (いつ) どの程度 Throttle を動かせばよいかわかっていないということ。回復手順の設計ができていない自覚があったため、教官に尋ねる。

A/S や Alt の補正は Pitch と Throttle で行うがどちらで補正するか見きわめる (← ここまでわかる)。どの程度補正するかは Trend Vector が消えるまでをメドにする、とのこと。もう一つ指摘された自覚のなかった欠点は、Recovery に際して (全体を) 改善しようとすることに意識が向かっており、いかなる諸元要素もこれ以上悪化させないという意識がないこと。悪化させない → おおまかに適正水準に持っていく → 安定させる → 至らない要素を把握 → 細かく補正する、の順で行うのが、エアラインにおける Recovery のコンセプト。

Recovery from Unusual Attitude

最後に Recovery from Unusual Attitude を好きにやっていいよと自己学習の時間を得る。そこで、巡航速度まで上げてみようとしたり、Stall させようとしたり。シミュレータでは Stick Shaker は動かなかったが、警告音・表示を確認し、実際に Stall した。

次回 Step Check 予定。Take Off から通常の Procedure で 5,000 ft まで Climb した後、2 分以内に 6,000 ft, 240 kt で Stabilize させることが要件。

本日の重要ポイント

  • ジェット機といえども Throttle と Pitch の設定が適正消えるまで枠内であれば、おおむね所望諸元へ向かう
  • だが Unual Attitude では (Throttle はともかく) Pitch を一定枠に収めるのがきわめて難しい
    • Unual Attitude で Pitch 制御が難しいのは Airspeed や Trim が大きく狂っているため
  • (Pitch や) Throttle の補正幅は Trend Vector を参照して決める
  • Pitch Trim が取られていると補正が楽になる
    • AutoPilot 解除後は TrimAdjusted
  • Recovery は次の順序
    1. いかなる諸元要素も現状より悪化させない
    2. 全体をおおまかに適正水準へ持っていく (複数の諸元要素を同時に補正しようとしない)
    3. 待って安定させる
    4. 至らない諸元要素を把握する
    5. 細かく補正する

Training in Commercial Pilotage with FTD

都内某所で Flight Simulator による F/O 訓練。B737-800 で 2.0H。

Straight & Level Flight

本日も 6,000 ft, 240 kts で Straight & Level Flight (および Recovery from Unusual Attitude)。ようやく ± 10 ft, ± 1 kts の精度で Straight & Level Flight するコツをつかむ。が、まだ step check (科目修了試験) のレベルには至らず、次回でのチャレンジをめざす。

2 回の訓練とその振り返りにより、ジェット機の操縦はなぜ Straight & Level Flight ですら難しいのか、その構造的な理由が見えてきた。

  • 理由① : 慣性を対象とした Throttle 調整

ジェット機の Throttle 調整は、小型機のように飛行諸元の絶対水準 (A/S = ●● kt & Alt = ●● feet) を決めるものではなく、慣性 (の変量)、すなわち相対水準を決めるものである。Straight & Level Flight が維持できていたとして、1 kt 上げるためには、N1 を +1% して所望 A/S になる少し前に元に戻す、という操作が必要になる。

  • 理由② : 要求される Pitch の精度

飛行速度が速いため、Pitch のわずかなズレが A/S と Alt の大きな乖離につながる。したがって、York の圧を感じ、ADI にも表示されないくらい僅少な髪の毛1本分の Pitch 操作をすべきとなる。大きくなったズレの補正は、Pitch ではなく慣性の変量を相対的に調整する Throttle で行わなければため、その難しさの分だけ Over Control しがちになる。

  • 理由③ : スキャンの速度と対象

所望諸元での飛行からズレを大きくしないためには、基準となる Pitch (6,000 ft, 240 kts の Straight & Level Flight なら Pitch = 約 2.5 ° + Δ) を見定め、そこを中心に大きく離れない (一定枠内、たとえば ± 2° で維持する) ことが重要。一瞬でも大きく外れると飛行速度が速いため、A/S, Alt が大きく乖離する。ところが、Throttle 操作するために EICAS へ目をやるとそれだけで髪の毛 1 本の精度を要求する Pitch が狂う。スキャンの目線が ADI に戻ってくるまでのインターバルが長いと、設定したはずの枠から Pitch がいとも簡単に大きくはみ出ることになり、そうなるともう当初意図した Throttle 調整が無意味になる。したがって、ADI をスキャンの中心に据えること、スキャン速度を上げること (特に他をスキャンしたらすぐに ADI に戻ること) が肝要。


という気づき (の一部) を教官に伝えたところ、特に理由①の分析に感心され、いくつか新たな助言をもらった。その中で印象深かった洞察は「補正操作でさえ慣性を動かす要因になる、なぜなら Flight Controls (Aileron, Elevator, Rudder) を動かして空気抵抗を生じさせているため *1」というもの。実利的だった助言は「イメトレをするなら、A/S & Alt の組み合わせに対し、York と Throttle 操作をどうするか即応する訓練を Flash Card 的に実施するのが最適」というもの。


また、教官による Recovery from Unusual Attitude のデモンストレーションを見て気づいたことがある。 Recovery from Unusual Attitude は所望諸元にもっていくまでに A/S, Alt, V/S, Heading, Throttle を総合的にコーディネイトするわけだが、諸元のすべてを常に総合的にコーディネイトしているわけではなく、まずは Bank 調整、次に Alt および V/S 調整のための Pitch 補正、そして A/S 調整のための Throttle 補正、合間に Heading 調整のために少し Bank を傾ける ... というように意識を傾ける対象が時点時点で常に 1 つに定まっている。一方で、その対象以外も決して無視しているわけではなく、一定幅から外れない程度に周辺視野や意識の片隅 (20% くらい) でコントロールしている。

私の場合は、Bank & Pitch を瞬時に修正する初動の反応はよいものの、その後は常に全体をコーディネイトしようとして意識がどこにも集中していない状態になり、結果として所望諸元に達するまでに長い時間を要することになっている。反応すること、主としてコントロールすべき対象を判断すること、そこに意識を傾けること、それでいてその対象以外を意識の片隅で緩やかにコントロールすること、が肝要。

本日の重要ポイント

  • Pitch
    • York の圧を感じ、髪の毛 1 本分をコントロールする
    • Pitch のコントロールを一定枠内 (± 2 °) に抑える (Scanning が ADI から離れるときに要注意)
    • Pitch で精緻にコントロールできなければ、より難しい Throttle で大きく調整しなければならなくなる
  • Throttle
    • 慣性の変量 (相対水準) をコントロールすると意識する
    • Throttle 調整の前後に EICAS をチェックする
  • Scanning
    • スキャン速度を上げる (特に ADI への戻りを速くする)
    • 漫然とコーディネイトしようとせず、主たる修正の対象へ意識を傾ける、一方でその対象以外を意識の片隅で緩やかにコントロールする
    • 反応速度を高めるイメージトレーニングとして、Flash Card 訓練が有効
  • Instrument
    • A/S, ALT ゲージの上部に目標諸元が赤紫で表示されている
    • A/S, ALT の目標水準 (および Allowance) はゲージ内に赤紫の Indicator が表示されている (A/S の Allowance は ± 3 kt)
    • 地表接近時には ADI 下部に電波高度計高度が表示される

*1:つまり、Over Control などしたら空気を搔き乱していることになり、Throttle による慣性調整など極めて困難だということである。

Training in Commercial Pilotage with FTD

都内某所で Flight Simulator による F/O 訓練。B737-800 で 3.0H。本日は 6,000 ft, 240 kts で Straight & Level Flight (および Recovery from Unusual Attitude)。

Straight & Level Flight

ただの Straight & Level Flight なのだが、± 10 ft, ± 1 kts の精度で維持するのは非常に難しい。職業パイロットに敬意を抱く。

Jet Engine の Throttle は (遅行するため) 所望諸元を安定保持させるための調整が難しい。また 繊細な調整をする割に York がとても重い。3 時間の訓練で左肩周辺が筋肉痛。おそらく 3 日は引きずる。

本日の重要ポイント

  • Pitch
    • Take Off は 12.5 - 15° (に 5 秒かけて持って行く)、Level Flight は (条件にもよるがおよそ) 2.5° + α
    • A/S, Altitude, Throttle 調整の前に、Pitch (ADI) を維持し、所望諸元への必要変動量を測る
    • ポイントの 1/2 幅で調整する (天井、串刺し、座布団)
    • トレンドを先読みし、Over Control にならないよう頃合いを見計らって York を緩める
  • Bank
    • Boeing の ADI における Bank Indicator 表示方式は C172, Baron (Garmin) とは逆で、表示上ズレている方に York を倒すと Neutral 方向に動く *1 *2
    • 旋回バンクは 25°
    • Bank は Pitch に比べ繊細に動くため、Pitch Control の合間に、緩やかに傾け、緩やかに変針するのを待ち、緩やかに戻すことでよい
  • Throttle
    • [Starting Take Off] N1 40% まで Power Up、出力安定したら、離陸推力を示す Green Bug (約 85%) まで Power Up して Brake Release
    • [Take Off] V1 までは Throttle から手を離さず、V1 以降は両手で York 操作してよい
    • ジェット機は慣性が大きく (特に Throttle 調整は) すぐに反応しないため、その分を見越して操作をする
    • ジェット機の Power Setting は N1 Indicator を一定にすれば安定になるものではない
    • A/S = 1 kts あたり N1 Indicator = 1% で調整するが、所望諸元に近づいたらその調整分を戻す *3
    • 左右の出力差に注意
    • Throttle 操作時に Pitch がブレないように意識する (Power Up するなら Pitch Up しすぎないように York を抑えることを意識する)
  • Scanning
    • 安定したら Stabilize とコールする
    • ジェット機は小型機よりも A/S が 3 - 4 倍速いため、それだけ早く Scan する
    • 大きな変動は A/S や VSI の Trend Vector (緑のインジケータ) で把握する
    • Commercial Pilot の目標は、ズレないことではなく、ズレにすぐ気づき、すぐ修正すること
    • 状況を先読みし、乗客にストレスを与えないスムーズな操縦を目指す (クルマの運転と同じ)
    • 所望諸元をマニュアルで維持できないパイロットはオートパイロットの使い方もうまくない

*1:C172 では機体天頂を表す「内側」の針が固定で地平線および鉛直方向を表す「外側」の針が傾く一方、Boeing では機体天頂を表す「外側」の針が固定で地平線および鉛直方向を表す「内側」の針が動く。また Boeing では飛行機および Wings の表示がない。

*2:機種転換訓練および計器飛行の経験に乏しく、姿勢計の Bank Indicator を読み誤った事故に 2008 年 9 月のアエロフロート 821 便墜落事故がある。

*3:Throttle 調整方法が小型飛行機とは異なる。小型飛行機では慣性が小さく Airspeed / Altitude に対する所要 Power がほぼ決まるため、絶対基準で Throttle Setting すれば所望諸元に達する。一方、大型飛行機では慣性が大きいため、慣性を安定させることに対する所要 Power がほぼ決まっており、Airspeed / Altitude を修正するには相対基準で Throttle Setting を修正し、所望諸元に達する際には Stabilize させる (= 慣性一定にする) ため Throttle Setting を元の水準に極めて近い位置に戻さなければならない、と考えると理解しやすい。

Self Training for Instrument Rating w/ FTD

ILS Approach (Self Training)

都内某所で Flight Simulator による計器飛行訓練。Beechcraft Baron G58 で 1.0H。

シミュレータの使い方を教わり、自主訓練。PGUM を MVFR, Wind 150 at 10 Gust 15 に設定し、RWY 6R に ILS Approach 3 回。

1 回目は Localizer を何度か軽く Overshoot しつつもそれなりにきれいな Approach。2 回目は Localizer にきれいに合わせにいくも、降下計画を誤って降りられず、Short Final で Right 360 してもなお合わずに Missed Approach。3 回目は Localizer & Glide Slope ともに合わせてそれなりにスムーズな Landing。

降下がうまくいかないのは Glide Slope 接地点と Touch Down Point のオフセットをあらかじめ把握していなかったため。Overshoot することなく Localizer に載せられないのは計画的に DME Arc などを描かず、CDI に載せればよいと適当にナビしたため。後者は距離があればなんとかなるものの、いずれの失敗も飛行計画を事前に練っていないことが原因。

実機よりもシミュレータの方が Sensitive で操作が難しい。誰の目もない自主訓練は緊張感がなく、甘さがでて緩い操縦をしがちである。1 回目 Approach がうまくいった後の Landing は実は気が抜けていて、Porpoise & Bounce してひっくり返ったところ (だけ) を教官に見られた。

本日の重要ポイント

  • 降下計画は飛行前に入念に練る