ファイナンス研究科に来た原点

今週の集中講義「コーポレート・ファイナンス」を受けて、ファイナンス研究科に来た原点*1を思い出した。

社内研修で4〜5回経験したケース・スタディでの議論だ。優秀な社員を集めているはずなのに、事業戦略を決定する際、みな不毛な議論をする。CF のデータが与えられていても定量分析することもなく「この施策は既存事業とシナジーが大きい『はず』だからやるべきだ」などと思い入れしか語らない。そんなものは説得力がないから、いくらぶつけ合っても水掛け論にしかならない。

それを見越して私は議論の序盤に「根拠の薄い主張は確度で割引いて考えましょう」と Decision Rule (= 意思決定基準) を設定するのだが、中盤に却下という合意が形成されたはずの主張ですら、最後は息を吹き返し Rule を無視して熱い思いだけを語りまくる。結局いつも議論は発散。それはディベートではなくてスピーチというのだ。

そして主催者や聴衆もケースの内容*2から乖離して会社の現状や主流に近い考え方をする方を評価する。それはジャッジではなくて同調というのだ。埋没費用に捕われて既定路線と同じ結論を導くなら、議論する意味などまったくない。時間の無駄である。

税法を学ぶためにファイナンス研究科に来たのだが、意思決定が何たるかも知らずバカげた言い合いしかしない場に愛想をつかしたことが原点だったことを考えると、Valuation は私のめざすべきところなのかもしれない。

*1:原点は、実はここに述べたことだけではない...全部で3つある。

*2:自社のケースではない。他社のケースなのに、自社の既定路線でモノを考える。