くりっく365

金融先物取引法ほか関連法令の改正で取引所為替証拠金取引くりっく365」なるものが7月に発足したようだが、まったく気づかなかった。

気になる投資・財務・会計・税務・監査の記事は、当然、日経新聞で毎日チェックしていているのに。ファイナンス研究科の今学期授業「租税法」で所得税法を、「証券化」で投資サービス法を、「証券取引法」で市場取引と相対取引を学んでいるのに。なにより、相対取引で為替証拠金取引 (FX Margin Trade) をしていて年間20万円という「雑所得の壁*1」にどう対処すべきか非常に悩んでいる身なのに。うかつなことに1ヶ月半もの間知らずにいた。アンテナが低かったとは思えないのだが、なぜ見落としていたかまったくの謎。

くりっく365は世界初の FX Margin Trade の市場。取引所取引は非取引所取引と較べ、下記の点で税制が優遇されている。

  • 雑所得・申告分離課税で税率は一律20% -- 非取引所取引は雑所得・総合課税による累進課税最高税率50%)
  • 他の商品から生じる雑所得区分の益金・損金と通算可能 -- 雑所得区分の原則は通算不可
  • 3年間の欠損繰越可能 -- 所得税の原則は欠損繰越不可

いずれもいままでの雑所得課税の原則からかなり離れた大幅な優遇。数十万の元手で年間100万、200万稼ぐことも可能な FX Margin Trade にあっては、30〜50%の税率*2で課税されるというのが最大の課題であったが、それが解決され、他の金融商品と同等の位置づけになりつつ*3ある。

しかし、なぜ取引所取引のみの優遇なのであろうか? 市場取引か相対取引かの違いで同種の所得に対する課税を区別する法理論上の根拠はない。まったくの政策優遇である。取引所取引と非取引所取引を同一課税年度に混在させた場合、まったく同種の所得を、取次会社の違いにより、一部は申告分離で、一部は総合課税で申告するという奇妙なことになるということを税務当局は想定しているのだろうか。

*1:給与所得者の場合、為替証拠金取引などの雑所得が20万円を超えると確定申告対象になり、他の金融商品に較べ高率の税がかかる。

*2:FX Margin Trade をやる人なら、たいていは30%以上の税率が適用になるであろう。

*3:過去の経緯を考えると、投資家保護の環境はまだ他商品と同等とはいえない。