都内某所で Flight Simulator による F/O 訓練。B737-800 で 2.0H。
Straight & Level Flight Step Check
本日は元 ANA Wings Pilot (その前は空自 F-4 Phantom II Pilot) の K 教官に 1 時間のトレーニングを受けた後、いつもの N 教官による Straight & Level Flight の Step Check。
K 教官と Take Off from RJTT RWY 34R から 6,000 ft, 240 kts での Straight & Level Flight。Straight & Level Flight は Pitch も Heading も ±0.5 °、±10 ft に収め、それを 10 分、15 分と維持する。下記の特徴があるために「実機より操縦が難しい Simulator でここまで集中力を持続し、精度を維持できるのはプロパイロットでもなかなかいない」とK 教官からお墨付きをいただく。
- 実機にはある Yoke に対するフィードバックがない。
- 実機よりも Yoke の遊びが大きく、繊細なコントロールが難しい。
- 訓練のために敢えて発生させているのか、安定飛行をしていても、それを崩す Random Noise (突然の諸元の揺らぎ) がときおり入る*1。Gust があったとしても実機ではここまで揺らがない。
それでは、と小休止を挟んだ後、N 教官による Step Check。また Take Off from RJTT RWY 34R から 6,000 ft, 240 kts を目指す。 5,000 ft から Time Check で 2 分以内の Stabilize で合格。いつもより安定した Take Off & Climb で 1 分 40 秒くらいで 6,000 ft, 240 kts 近辺へ寄せるが ... Over Control で 4 分たっても安定しない ... そして Fail。
敗因は、目標へ寄せることに夢中になり、集中しすぎで Scanning 頻度が落ちている、とのこと。2 分の Time Trial で平常心を失ったでしょう。Examiner はそこを見てるのですよと。
... それは否定しない。Scanning 頻度が落ちているのは自覚があった。事前に平常心を保つと内心言い聞かせたにも関わらずこの結果となったのはメンタルの弱さだろう。だが一方、いい集中力を発揮した、だからこそいままでにない Smooth Climb ができたとも思っていた。前半のトレーニングにおいては、繊細な Straight & Level Flight でお墨付きをいただいたにも関わらず、Stabilize できずに Fail した真の敗因、自己の弱点は別にある。
1,000 ft 以上など目標諸元を大きく動かすときに必要となる操作量・操作タイミングがわかっていないのだ。Unual Attitude から体勢を立て直すときの初動、そして、Straight & Level Flight において 10 ft, 0.5 kts を髪の毛1本の精度で行う繊細なコントロール、はもう既に体得している、が、その中間、少し離れた目標水準へ合わせるときの操作をうまく設計できていない。Pitch を上げるべきか下げるべきか、Throttle を上げるべきか下げるべきか、操作の方向性は瞬時に判断できるようになった、が、操作量と操作タイミングがわからない。そしてこれまでジェット機のそれをきちん教わったことがない。小型機の操作手順でそこを埋めようとしていることが失敗の原因なのだ。うまくいくはずがないのに、ときにまぐれ当たりでうまくいってしまうことがあることが事態をよりわかりにくくしていたと思う。
小型機 (Cessna 172) では、目標高度の - 50 ft 手前 (Climb), + 100 ft 手前 (Descend) で Level Off のための Throttle 操作をする。ジェット機は速度が速く、また、慣性があるからもう少し手前で Level Off 操作だろうと適当に 200 - 300 ft 手前で Throttle 操作をしてきた。だが、それが間違いだと今日 Step Check の後に気づいた。正確に教わったわけではないが、教官の言葉の端々から、ジェット機の正しい操作は以下のようなものではないかと推測する。
- ジェット機においては Level Off のための初動は Throttle ではなく Pitch。Throttle は AirSpeed 調整目的で使う。
- VSI を意識する。Altitude Transition は 500 - 1000 ft/min くらいで緩やかに行うのがよい。
- 大きな転針は 15°Bank で、小さな転針はその角度の Bank で行う。
- 操作量は根拠に基づき決定する。小型機の経験に基づき適当に決めてはならない。
必要なのは、平常心と根拠に基づく Transition 設計だ。
K 教官は優しい。操縦は弱い己の心と闘い続ける武道だと教えてくれた。