今週の授業について (10/17 〜 10/22)

月6 税務会計A (勝島敏明先生)

今週のテーマは、租税概論。

租税原則から財政学まで。

月7 戦略的思考とコミュニケーション (川本裕子先生)

今週のテーマは、MECE

同級生の意見を聞くと、意外なことに MECE はみんなの常識ではなかったらしい。提案書作成では顧客環境分析の切り口として、システム開発ではデータ構造デザインやフロー設計するために、MECE 発想は私に不可欠。まあ、そんな大そうなものではなく一冊本を読めばよい程度の問題整理法なのだが。

MECE は問題整理のフレームワークとして美しい思想だが、実際に実行しても結果は意外と美しくなかったりする。フレームは整っても、各フレームにカテゴライズするコンテンツが偏ることも多い *1 からだ。マーケティングなど定性分析の場合は MECE にしても何かモヤモヤ感が残ることもある。

授業で演習した国家財政分析で、全体をストック/フローに、フローを営業/投資/財務キャッシュフローに分解する方法を提案したらウケがよかったようだが、MECE定量分析に絡めるというのがコツ *2 なのだ。特に会計学の観点で切ると切れ味がよく、労せずしてデキル感が醸し出せる。というのも当たり前で、会計 (Accounting) とは勘定分け (Accounting) のことであり、Accounting とはもれなくダブりなく (= MECE に) すべての金額を責任範囲 (= Accounts / 勘定) に分割することを意味するからだ。

水6 国際会計トピックス (高橋健一先生)

今週のテーマは、Form 20-F, Form 6-K, Regulation S-X, Sarbanes-Oxley Act of 2002 (SOx)。

Form 20-F, 6-K はそれぞれ外国法人の Annual Report (有価証券報告書), Current Report (臨時報告書)。SOx は Section 302, 404 にて内部統制の有効性に関する評価の証明書 (宣誓書) に CEO と CFO が署名しなければならないことが定められるので、不正の抑止力になるが、罰則規定が厳しいので経営者が尻込みするという。しかし署名をすべきは内部統制の有効性に関する評価に対してであり、不正を起こさないと保証することに対してではない。監査基準書 Statement on Auditing Standards では

[AU 316 -- Consideration of fraud in a financial statement]
(.10) Fraud also may be concealed through collusion among management, employees, or third parties. ...

[AU 319 -- Consideration of internal control in a financial statement audit]
(.21) ... The likelihood of achievement is affected by limitations inherent to internal control. These include the realities that human judgement in decision-making can be faulty and that breakdowns in internal control can occur because of human failures such as simple errors or mistakes ...

(.22) ... controls, whether manual or automated, can be circumvented by the collusion of two or more people or inappropriate management override of internal control. ...

と規定する。不正は共謀で隠されるかもしれないし、内部統制は限界があるし、共謀が内部統制を無力にすることもある、と認めているのであるから、署名することを極端に恐れる必要はないのではないかと思う。もちろん経営者による共謀やマネジメント・オーバーライドなどは言語道断だが。むしろ負担なのは署名ではなく内部統制評価のコストなのではないかと思うので、次回質問してみる。

水7 応用コーポレート・ファイナンス (新井富雄先生)

先週出題の課題は来週が期限なのだが、クラスメートの U さんに答え合わせしようと誘われたので、慌ててやることにした。きちんと向き合う覚悟さえ決まれば、大して億劫な課題ではない。

問題1は Exit 年度の除却損の取り扱いがポイントであろう。問題2は特に大した論点はないと思っていたが、意外と IRR と NPV をどう解釈するかは考察すべきポイントかもしれない。CF のインとアウトが2回反転するから2つの IRR が出てくるというのは、工学のサンプリング定理 *3 を思い起こさせる。問題3は Excel ソルバーで解くと局所最適解に陥るかもしれないと考え、プログラムを作成し全数検索する。作成したプログラムは Perl でわずか 27 行。問題解決する際に手段を制限されないのがプログラマの強み。気になったことはプログラミングしてとことん処理してみる。プログラムの計算量から解法についての示唆を得る。問題4は Excel のソルバーで。この種の問題設定はエリヤフ・ゴールドラットTOC を思い起こさせる。

さて、今週のテーマは、EVA と MVA

EVA など単なる一指標に過ぎないと思っていたが、MVA との関連性ではじめてファイナンス会計学のいいところ取りをした体系だと理解する。経済的価値会計とでもいうべき存在だが、認識基準の統一性を犠牲にしているので会社間 Comparability はなく、管理会計的指標である面は否めない。社内で利用するにしても、会計基準をひとつ創るようなものであるから、かなり手間となるであろうことが実務上の問題点か。

金6 ミクロ経済学の基礎 (蟻川靖浩先生)

創立記念日につき休講。

金7 事業再生 (田作朋雄先生)

創立記念日につき休講。

土3 アセット・プライシング (池田昌幸先生)

今週のテーマは、リスクプレミアム、絶対的リスク回避度、相対的リスク回避度。

絶対的リスク回避度 (ARA)、相対的リスク回避度 (RRA) など、リスクプレミアムから続く展開は、興味の振り向け方が非常に自然に感じる。次々と出てくるトピックを、休む暇なく楽しみ、自分のものにしようとする。砂が水を吸うがごときこの感覚に1学期に味わった新鮮な興奮を覚える。それはつまり自分がこの分野の入門者であるということを限界効用逓減則は教えている。

土5 ベンチャーキャピタル・マネジメント (秦信行先生)

今週のテーマは、ベンチャーキャピタルの実態と投資プロセス。

*1:フレームがあっても、(それに該当する) コンテンツは思いつくまま列挙するほかない。

*2:この究極が DuPont Analyse。

*3:デジタル・サンプリング・レートはサンプリングする音の最高周波数の2倍。最高音は山と谷の交互繰り返しで表現可能。CD は 44.1kHz のサンプリング・レートで 22kHz までの音域を再現できる。