「自己投資」考

ワールドビジネスサテライトを見ている。

自分にとって価値があると思われるものには、投資をする (傾向がめだってきた)。

某化粧品会社の広報担当者が言う。化粧品を購入することは投資なのだろうか?
化粧品に限らず、ブランド品、海外旅行、英会話教室に支出することをF1層*1は自己投資と呼ぶがそれは本当に正しいか?


フリーキャッシュアウトフロー*2には3通りある。

  • 投資 (Investment)
  • 費用 (Expense)
  • 資本的支出 (Capital Expenditure)


建物の購入は投資である。
購入した建物を転売してキャピタルゲイン*3を狙ってもよいし、減価償却*4して自分で利用してもよい。
どちらにしても建物を資産とする会計処理をするので、投資である。


建物の維持のための修繕は費用である。
それは修繕費という勘定で会計処理する、費用である。


建物の価値を高めるための修繕は資本的支出である。
修繕をすることで建物の市場価値があがったり耐用年数が延びるのであれば、それは建物の資産価値を高める追加投資と認められる、資本的支出である。


さて、化粧品の購入は投資だろうか?
(化粧するために購入した) 化粧品は転売できそうにない。投資ではない。


では、費用であろうか、資本的支出であろうか?
化粧することは、生命維持に必要とまではいえないが生活維持には不可欠なのであろう。修繕費に類する費用といえそうだ。
化粧で自分の価値を高めていると主張される方については、自己投資(=資本的支出)と認めてもよいかもしれない。
しかし、資本的支出はそれがない場合に較べて大きく資産価値(=市場価値)が上がる支出であるのだから、化粧なしの姿は見られたものではないということを主張しているに等しい。


ブランド品、海外旅行、英会話教室への支出も、キャピタルゲインが発生するほど、つまり売値が買値を上回るほど自分の市場価値を劇的に高めるなら自己投資であるが、そうではないなら自己満足を維持させるための遊興費という費用でしかない。


百歩譲って自己投資との主張を認めてもよいが、計上できる資産価値は、減損会計基準により、限りなく0に近い値に切り下げられる。
結局、投資とは後日回収可能なものをいうのだ。


米国の大手通信会社であったワールドコムは他社通信業者への接続料を投資としていた。
費用とすべきものを資産とする粉飾決算を行いステークホルダー*5を欺いたために、責任を追求され消滅してしまった。


遊興費を自己投資と主張する輩は、自分を欺いている。自分を欺くために、自分の意識と活動を粉飾している。
個人活動の粉飾決算 ... 冒頭の化粧品会社の広報担当者、決算まで化粧することを言い含んでいるのであれば、みあげた商魂である。

*1:20歳〜34歳の女性

*2:営業活動および投資活動でのキャッシュ流出

*3:買値より売値が高い場合に得られる利益

*4:経年変化で朽ちていく価値を見積もって、毎年減価すること

*5:株主、取引先、消費者、社員、税務当局、債権者など企業に結びつく関係者すべて