月6 [集中] コーポレート・ファイナンス (砂川伸幸先生)
今回のテーマは、コーポレート・ファイナンス概論。
内容的には「ファイナンスの基礎」「エクイティ・インベストメント」の概観。市場リターンを下回るプロジェクトはたとえ黒字でもファイナンスできない。プライシングとは市場との相対評価である。」というごもっともなお話し。
初回の授業なので成績評価の話あり。「理解した人は絶対評価でA(優)にと思っていたら、事務局に睨まれたので、相対評価にせざるを得ませんでした。」とのこと。そうか! そうだったのか! さすがファイナンス研究科。成績評価に相対評価しか認めないのは「市場というものを学生に身をもって理解させる」という深遠な教育方針のためだったとは! われわれは事務局にプライシングされてる!?
月7 [集中] コーポレート・ファイナンス (砂川伸幸先生)
今回のテーマは、リスクとリターン、ポートフォリオと CAPM。
ポートフォリオ理論についての講義で、これまた「エクイティ・インベストメント」の内容と重複。ただ「エクイティ・インベストメント」では意味論が薄かったので、各項目の意味を体系だてるのによい講義。
さてこの科目ではいずれグループでケース・スタディを行うようだ。グループの人材ポートフォリオに考えを巡らせたりする。財務・会計・税務・法務*1など得意分野の相関が小さい(かつ期待リターンの高い)グループにアサインされたいものだ。弱点である財務に強い人をポートフォリオに加える*2のが私の最適戦略。試験前の勉強会*3では財務が得意な方々に助けられたからなぁ。管理会計・財務会計・税務・数学あたりは貢献できそうだが ... 「みながリスク回避的であるなら、最適ポートフォリオはユニークに決定する」というのがポートフォリオ分離定理の教えるところ。グループワークではその最適ポートフォリオを個別数銘柄で構成しなければならないので、その構成銘柄となれるかどうかが勝負。まあ、どんなポートフォリオであれ、その期待リターンを下げないようにがんばらねば。
火7 [集中] コーポレート・ファイナンス (砂川伸幸先生)
今回のテーマは、企業の資本コスト。ケース・スタディ。
類似企業・証券から妥当と思われるデータを拾ってきてベータなどを算出する。定性分析だけで(=恣意的に)参考データを類推適用してよいものなのか? 割引率が1%異なれば現在価値が10%のオーダーで変化するのに、もっと精緻な算定をするプロセスを追求しないのか疑問に思う。ファイナンスの理論は美しいが、実務は会計に較べて非常にいいかげんな印象を受ける。会計学ならば、精緻な算定をしないなら、しない根拠を用意する(=経済合理性や定量的な限界を説明する)ところ。Document what to do or the reason not to do -- やるならやることを、やらないならやらない理由を (後日でも説明責任が果たせるように) 記録しておけ、というのが原則だと思う。
水6 [集中] コーポレート・ファイナンス (砂川伸幸先生)
今回のテーマは、DCF 法と現在価値。
水7 [集中] コーポレート・ファイナンス (砂川伸幸先生)
今回のテーマは、Valuation Under Tax Shield。APV 法と WACC 法。
ファイナンス理論の講義や書籍ではいつもお茶を濁され、詳細が議論されないテーマ。法人税は重要だっていうのに! ようやくここで出逢えた。
会計利益から税引後 FCF への変換など会計学分野が少し幅を利かせる。なかなか体系だった講義であったが、せっかく財務 CF に言及したなら「なぜ、財務 CF を含まない FCF を用いるのか」まで俯瞰して説明があってもよかったと思う。答えは「資産サイドの CF(=FCF / Operating Earnings)と負債・資本サイドの WACC を比較する」のが最も簡単で、汎用性の高い値を得られるから。
木6 [集中] コーポレート・ファイナンス (砂川伸幸先生)
今回のテーマは、実物投資決定。NPV 法。
EVA の詳細な説明はなかったが、EVA と NPV は会計にたとえると「当期未処分利益」と「総資産」だという印象を持った。前者は単年度の残余 CF であり、後者は各期利益の源泉。
木7 [集中] コーポレート・ファイナンス (砂川伸幸先生)
今回のテーマは、ケース・スタディ。
ロッキード社の L-1011 プロジェクトについて。内容は非常に簡単。しかしその示唆するところはとても大きい。
会計最先進国のアメリカでも SFAC1 がキャッシュフロー計算書に言及する 1978 年以前は、投資家には企業内部のキャッシュ・フローが見えず情報非対称性があったはずなのに、市場はプロジェクトのマイナス NPV を時価総額の減少額としてきちんと織り込んでいることに驚愕。
キャッシュフローに情報完備なインサイダーにとっても将来不確実性のために定量分析の正確さには疑問の残るマーケティング予測・事業計画を、資本市場がこれほど正確に評価するとは...「マーケットの声を聞く」という言葉がこんなに重みのある言葉だとは思わなかった。マーケティング(製品市場)−管理会計−財務会計−ファイナンス(資本市場)という分析サプライチェーンが一貫して整合するかどうか、マーケットに接する両端から事業計画は検証されなければならない。
金6 [集中] コーポレート・ファイナンス (砂川伸幸先生)
今回のテーマは、資本構成と資本調達。
財務レバレッジ、事業リスクプレミアムと財務リスクプレミアム、Pecking Order 仮説、最適資本構成など。ほとんどのトピックが他科目などで既出だが、無駄なく体系をなした解説がこの講義の強み。すべては CFO として知っておくべき示唆に富む項目。
金7 [集中] コーポレート・ファイナンス (砂川伸幸先生)
今回のテーマは、ケース・スタディ。
Du Pont 社の事業・財務分析。事業戦略と財務戦略の関連性の学習。もしかしたら、1970 年代 Du Pont System が開発された背景を分析したのかもしれない。
グループの構成員はほとんどが事業会社勤務。設問は事業系と財務系が5:5だが、われわれのグループが費やす時間は7:3。でもここはファイナンス研究科、結果を求められるのは2:8。というわけで、質問に答えられない...ポートフォリオ理論が適用されずリスクが高いグループになってしまった!
土3 [集中] コーポレート・ファイナンス (砂川伸幸先生)
今回のテーマは、ペイアウト政策。
株主が配当を強く求めるケースが紹介され「低リスク資産である現金を配当としてキャッシュ・アウトすると残資産の期待リターンは高くなる。しかし、一方でリスクもベータも高くなる。そのことを踏まえて株主は配当せよと要求しているのか?」との問い。私の考える答えは Yes。事業戦略も「多角化」より「選択と集中」が求められることを考えると、リスクを覚悟して期待リターンを強く求めるのが投資家なのではないかと思う。なぜなら、リスク分散するためのカクテルは、経営者が事業ポートフォリオで作らなくても、投資家は証券ポートフォリオを自由に作れるから。企業の事業リスクを高めておいても、証券で調整して必要な分だけポートフォリオに組み込めばよいだけのこと。企業内部にいて安定を求めるという日本的文化に浸かった身には厳しいが、本来、企業とはリスク・テイクするための器なのだと改めて思う。
アメリカの実証研究の結果をもって「配当には配当課税がかかるので内部留保することを志向するケースもある」と説明されたが、実は条件によっては内部留保にも Accumulated Earning Tax (AET) または Personal Holding Company Tax (PHC Tax) という留保金課税がかかる場合がある。MM 理論に Tax Shield を導入すると最適資本構成が存在するように、配当でも内部留保でも理論上は無差別なペイアウト政策が「配当課税・留保金課税と投資環境を与えると最適ペイアウトが決まるのではないか?」という仮説は研究テーマになる。税率と条件と環境の複雑な方程式になることは間違いないが。
土4 [集中] コーポレート・ファイナンス (砂川伸幸先生)
今回のテーマは、ケース・スタディ。われわれのテーマは、未上場企業の Valuation。
被買収企業の企業価値 (Fair Market Value) と買収価値 (Acquisition Value) は異なる。両者の差は買収後、営業権 (Goodwill / Premium) として定額償却される。シミュレーションの結果、Premium は買収後の B/S で貸借両建てで載ることを理解。Premium をいくらと算定しようが借方の実体は変わらず Premium だけが増減するのだが、貸方では資金調達方法により負債比率が大きく変動する。被買収側は高く売却したいのであれば、買収後の買収企業の B/S (および P/L の営業権償却) が Sustainable である Premium の上限を算定し、その範囲でオファーすべきだということだ。相手の懐を見て売り込めとはアラブ世界のよう。