ストックオプションの会計処理

本日の日本経済新聞http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20041217AT2M1700E17122004.html

ストックオプション、費用計上を決定・米会計審
 【ニューヨーク=藤田和明】米国で企業会計基準を決める米財務会計基準審議会(FASB)は16日、2005年から従業員向け株式購入権(ストックオプション)を費用として計上するよう義務付けると最終決定した。しかしハイテク業界などストックオプションに依存する企業からは激しい反発が続いている。

 ストックオプションはあらかじめ決められた価格で自社株を購入できる権利。株価が上がれば利益を得られる仕組みで、従来は役員や従業員向けにコストのかからない報酬手段として浸透していた。しかし実際には一定の費用が生じるうえ、IT(情報技術)バブルのころは乱用も目立った。投資家からは費用計上を求める声が多く、厳格な基準づくりが長年の課題だった。新基準の適用は来年6月15日以降に決算期を迎える株式公開企業から。FASBは最終決定に当たり、「財務報告書の信頼性を高め、企業間の比較も容易になる」と改めて強調した。コカ・コーラなど自主的に人件費として費用計上している米企業も多い。 (12:00)

SFAS (企業会計審議会意見書) 123 号によれば、ストックオプションはもともと公正価値 (=市場価格) による費用計上が、
原則、義務付けられている。(Fair Value Method)


ただ、 APB (会計原則審議会意見書) 25 号に、ストックオプション付与時の株価と行使価格の差額での費用計上を許す例外
規定がある。 (Intrinsic Method)


付与時に行使価格が株価を下回っていれば*1、実質、費用計上をしなくてよいことになる。
この APB 25 号が 2005 年から廃止になるということであろう。


会計基準がつくられたわけでも、自主ルールで費用計上している会社があるわけでもない。
例外規定がひとつ廃止されただけである。


真実と微妙に異なる報道は、経済担当記者の勉強不足が原因なのか、あえて会計語を巷間で理解される一般語へ翻訳して
いるのか、一般語の翻訳を会計語に再翻訳している私は、会計関連記事を読むたび悩むのである。


さて、ストックオプションに関しては、株式売却時の譲渡益まで給与所得とした日本での判決のその後も気になるところ。
付与時のストックオプションの公正価格が給与所得で、他の部分は譲渡所得とするのが、実現認識基準から考え
ても*2、取引関係や価格構成から考えても*3、合理的だと思うのだが ...


国家財政逼迫のおり、税務当局も公務員である裁判官も民間からぼったくろうとみさかいがない。*4

*1:そのように設定し付与しないと会社成長のインセンティブにならない。ただの利益供与である。

*2:株式売却時まで給与所得が確定せず、課税が繰り延べられるのは明らかにおかしい。

*3:売却価額を給与所得だというのならば、給与支給した会社側はその額を損金算入して課税所得を圧縮してよいはず。
    税務署の反面調査と同じ理屈。

*4:譲渡所得課税なら分離課税:税率 20% (所得税 15% + 住民税 5%)。給与所得課税なら総合課税:所得税率 37%。
    さらに、もともとの定期収入 (給与所得) への適用税率まで 37% になり、住民税・社会保険料等も上がる。