数が数えられないフランス語

昨年10月の石原都知事の発言「フランス語は数が数えられないから国際語として失格だ」とは何を指しているのか理解できないでいたが、どうやら「70 〜 99」のことを言っているらしい。フランス語では下記のように数える。

表記 意味
60 Soixante 60
61 Soixante-Et-Un 60 と 1
62 Soixante-Deux 60 + 2
... ... ...
69 Soixante-Neuf 60 + 9
70 Soixante-Dix 60 + 10
71 Soixante-Onze 60 + 11
... ... ...
76 Soixante-Seize 60 + 16
77 Soixante-Dix-Sept 60 + 10 + 7
78 Soixante-Dix-Huit 60 + 10 + 8
79 Soixante-Dix-Neuf 60 + 10 + 9
80 Quatre-Vingts 4 x 20
81 Quatre-Vingt-Et-Un 4 x 20 と 1
82 Quatre-Vingt-Deux 4 x 20 + 2
... ... ...
89 Quatre-Vingt-Neuf 4 x 20 + 9
90 Quatre-Vingt-Dix 4 x 20 + 10
91 Quatre-Vingt-Onze 4 x 20 + 11
... ... ...
96 Quatre-Vingt-Seize 4 x 20 + 16
97 Quatre-Vingt-Dix-Sept 4 x 20 + 10 + 7
98 Quatre-Vingt-Dix-Huit 4 x 20 + 10 + 8
99 Quatre-Vingt-Dix-Neuf 4 x 20 + 10 + 9

こういうおもしろい数え方*1をするということを初めて知ったときは感動したがねぇ。それこそ異文化を学ぶ醍醐味ではないかと思うのだが。

ちなみに、30 (Trente), 40 (Quarante), 50 (Cinquante), 60 (Soixante) と整合する 70 (Septante), 80 (Octante), 90 (Nonante) という単語が古語フランス語*2には存在する。あえて難しく表現する標準フランス語の数え方はフランス人の粋な言葉遊び (Jeu de Mots) *3 なのだ。これを捉えて「数が数えられない」と言ってしまうのは無粋な都知事の不勉強。

数が数えられないから国際語ではないと言うが、それでは「クリントンは第何代アメリカ合衆国大統領か?」のように疑問形序数が表現できない英語も国際語ではないのだろうか?「名詞の単数と複数の区別もできない日本語の方が下等では?」とフランス人に反論されれば、ぐうの音も出ない。

私は石原都知事のシンパではあるが、この瑣末な揚げ足取りは言語を学ぶ愉しみと比較文化の存在意義を否定する愚行でしかないと考える。

*1:個人的なポイントは 61 などにおける「60 と 1」の「と」である。なんかカワイイ。ちなみにドイツ語では「1 と 20」のように先に細かい方を言う。

*2:古語といいながら、実は現在でもベルギーやスイスの一部で使われている。

*3:幾何学が得意なフランス人の数字遊びでもある。