今週の授業について (9/26 〜 10/01)

月6 税務会計A (勝島敏明先生)

未開講。

月7 戦略的思考とコミュニケーション (川本裕子先生)

未開講。

水6 国際会計トピックス (高橋健一先生)

未開講。

水7 応用コーポレート・ファイナンス (新井富雄先生)

未開講。

金6 ミクロ経済学の基礎 (蟻川靖浩先生)

今週のテーマは、(古典的) ミクロ経済学の目的。

完成された基礎分野なので、さすがの蟻川先生といえど色をつけるのは難しい王道的な講義。

経済発展は所有権ほか法制度の確立度に相関するという「新比較経済学 The New Comparative Economics, Shleifer (2002)」が引用された。国際法制度を英米に近づけるための政治的な研究である可能性を先生は指摘していたが、それを割引いても、衡平法 (Equitable Law) で信託というものが確立しているがために、英米は経済発展度が高いのだと思う。ロシアや中国は所有権が怪しいために経済発展の可能性が低めに見積もられるのは誰もが認めるところであろうが、資本主義法治国家であるはずの日本もまた、信託という概念 (= 資産の運用者は資産の所有者ではないという概念) が弱く、革命を通じて為政が誰のものか *1 を考えた歴史がないために、既得権勢力の横領が横行する社会主義国家の様相を滲ませている *2 のだ。

金7 事業再生 (田作朋雄先生)

今週のテーマは、事業再生とは。

田作先生は PwC アドバイザリーの取締役パートナー。よく聞くことだが、ターンアラウンド・マネージャーとは法務・税務・会計の専門家ではないらしい。オーケストラにおける指揮者だと。

法学ではなく法社会学の重要性に言及。法は法が想定する世界しか定義しないが、現実社会は既定の法を超え変化していくものである。法解釈論を超え、メタ法学として社会学・経済学的な考察をすることが重要であるという点に同意。法の運用論は大事だが、それ以上に大事なのが立法論であると思う。この先生も、根拠のない感情論を展開し法の形式に拘る法学者と噛み合わない論戦を繰り広げてきたようだ。所与の制度に甘え、物事の本質を理解しない凡人とのくだらない戦いを強いられるのは、賢人の宿命か。講義タイトルの範疇に留まらず、人生の教訓が得られそうな授業。

土3 アセット・プライシング (池田昌幸先生)

今週のテーマは、消費者の選択行動と期待効用関数。

古典的ミクロ経済学ファイナンスの基礎の分野。すべての行動の基本原理「限界効用逓減則 *3」と確率モデル (客観確率主観確率) の復習。

池田先生のアセット・プライシングは難しく、厳しいとの評判に恐れおののいていたが、ミクロ経済学が好きで数学が得意 *4 な私には全く苦にならない講義になりそうである。つくづく評判は (私の嗜好・得意分野が典型的なファイナンス研究科生のそれと乖離しているので) あてにならないと思う。しかし、数学は計算ミスで成績評価を悪くしうるので要注意である。私にとってはハイリターンが期待できるが、そもそもハイリスクな特性をもつ *5 ので油断はならない。

土5 ベンチャーキャピタル・マネジメント (秦信行先生)

今週のテーマは、シリコンバレー

日本企業を飛び出してシリコンバレーで活躍する2人の技術者がビデオで紹介される。1人目のケースは、技術者が立ち上げた新規事業も軌道にのると社内の本流系部署が乗っ取ってしまうことを嘆く年配技術者の紹介。2人目のケースは、入社直後の1年間お茶汲みしかさせられなかった有能な若手技術者の紹介。

新規事業の新規性に Accountability や Responsibility を負えるのは、その事業を生み出した人間であるはずなのに、過去のビジネスモデルで成功した人間が権力を濫用して奪いとるという日本型大企業における組織運営の論理は、非効率なだけでなく企業の活力を奪う。こうした悪癖こそ本来の成果主義と相容れない構造であることに多くの企業は気づいていないと思う。

お茶汲みのような精神修行の効能を否定はしないが、それはそう育てるべき社員、それがふさわしい職種というものがあるはずである。企業は資本主義の下で効率化競争を強いられているわけであるから、社員一人一人が持つべき能力を最大限生かして戦うべきであるのに、日本企業では往々にして、何もかも一緒くたに「若い頃はみな精神修行をするものだ」という年功序列の発想がまかり通り、若手の能力を圧殺する。こうした発想をする者は「人間の能力は、年次によらず、個人に帰する(=有能な年少者は、無能な年長者を超える)」という事実を認められない悪平等主義者である。こうした悪平等主義者の撒き散らす非効率性は、グローバル化でなりを潜めたのだろうが、まだまだ残滓があるという事実を見せつけられた。

*1:日本国憲法前文によれば国政は国民の信託である。国政 (≒税金) の所有者は国民であって、政府でも官僚でもない。

*2:「フォーブス」アジア太平洋支局長 Benjamin Fulford の書き立てる日本観はあながち虚構ではないと思う。

*3:これは恋愛にも適用可能な行動原理である。いずれエッセイを書こうと思う。

*4:特に微積分学は得意。高1の時にまったくの独学で常微分方程式まで解けるようになった。

*5:この特性をヘッジせず、得意な数学に大きく頼っていたために大学入試では失敗している。