今週の授業について (10/09 〜 10/14)

水6 ファイナンス課税 (渡辺裕泰先生)

今週のテーマは、金融商品に対する課税の基本的考え方 (金融課税の一元化、租税最低、最適課税論)。

租税制度の本質論。今後の講義で展開されるであろう各論のための基礎であるので、租税法や法学演習ゼミの抜粋・要約的な内容。

水7 企業財務報告上級 (川村義則先生)

今週のテーマは、会計基準のコンバージェンス問題。

コンバージェンス問題を取り扱うので、国際会計トピックスに似ている。国際会計トピックスでは日米欧の市場と会計制度を等距離に詳細分析していくが、本講義は日本の視点から見た日米欧の会計制度史に重点がおかれている。

IFRS Option *1 に対して「(会計基準が違えど) 財務諸表を翻訳すればよい」とクラスメートの一人が乱暴な発言をするので、技術的な反論 (*) をしておく。すると「自社では在外子会社の個別財務諸表は各国基準で作成し、連結も必要なだけ各国基準に翻訳して作成していた」という。会計コンサル経験を否定しハンズオン経理経験しか認めない向きに「経理とは実務だ」と最近さんざん叩かれているので黙ることにする。連結はコンサルした経験もあまりないのでなおさら。彼が展開する大雑把な議論に「やっぱり違うのになぁ、経理実務やっている人がそんな乱暴なこと言うかなぁ」と思いつつ過ごしていると、最後にその人、先生に質問していわく「パーチェス法とプーリング法ってどう違うのですか?」...オイオイ、スベテキキカジリカヨ (-_ -メ

(*) ある認識基準に基づき記録されたトランザクションデータの集積が財務諸表である。会計基準が違う財務諸表を作成するには当然ひとつひとつのトランザクションデータの記録方式から設計しなおさなければ (最悪の場合 Dual Accounting で記録しなければ) 取れない情報がでてくるので、単純に翻訳で解決しない根が深い問題である、というのがその場での反論。さらにいえば、在外子会社の当該地会計基準ベースの財務諸表をそのままあるいは翻訳して連結するのは当該地の会計基準・監査基準の信頼性が担保されているということを前提とした「連結財務諸表作成の簡便法」であり、IFRS Option のように、何のゆかりもない設立地本国以外の会計基準で作成した財務諸表をそのままあるいは翻訳して設立地本国での正式な財務報告として受け入れられるかという問題とは次元が異なる。翻訳すると情報精度だけではなく監査証跡のトレーサビリティも落ちるので、財務報告のアサーションが弱まる。

金6 マーケットメカニズムとトレーダー行動 (宇野淳先生)

今週のテーマは、株式取引と情報 - 業績情報。

今回のゲームは自動車2銘柄の株式取引。前回に比べ建て玉が少なく、コンピュータが演じる流動性トレーダーが少ないことに開始してすぐ気づく。したがって、みなニュースに反応する展開になるだろうからポジショントレードは不利と判断し、成行で材料売買に徹することにする。この判断は正解だったと思うが、10単位ほどの成行注文であってもうっかりしている*2と少ない建て玉を食いつぶして値を動かしてしまい、期待通りの約定金額になっていなかったりする。終了後、建て玉が少なかったのは、プレイヤーの半分が初期資産を3割しか保有しない小口トレーダーの役だったためと判明。この状況で投資収益「率」を上げるのは厳しいと巨大ファンドマネージャーの苦悩を味わう。全体としては、全プレーヤー保有資産の 0.3% が取引コストに、1.1% が外部トレーダーに持っていかれるマイナスサム・ゲームであった。

金7 M&A (新田喜男先生/古川英一先生)

今週のテーマは、経営戦略におけるM&A

M&Aの概論・分類を対象とし、事業戦略をも語る講義。

受講生はみな退屈している雰囲気。コーポレート・ファイナンスは他の授業で既習であるので概論・分類だけなら目新しくない上、ファイナンス研究科生は明らかに事業戦略に興味がない。ただ、M&Aについてちょっと考えなければならないステータスである私にとっては、考えるべきことがこの講義で整理され有益であった。

*1:USGAAP または IFRS で在外市場に報告している場合、日本本国でも当該基準で報告可能であるが、その前段の条件を外しても有効とするかどうかが IFRS Option 問題。

*2:材料売買の場合、単位数を変更しようとする間に値が動いてしまうので、しかたなく単位数不変のまま注文を入れることもある。